「この問題わからん」と、子どもがプリントを持ってきます。見てみると、私もその場ではうまく説明できない。そこで、その紙を写真に撮ってAIに見せる仕組みを作りました。ただし、撮っても答えは出てきません。
出てくるのは、書き起こされた問題文と、そこから始まる会話だけです。今回はその設計をどう決めたか、そして作ってみて初めて分かった落とし穴を書きます。
宿題を写真で撮ると、AIは何をしてくれるのか?
いま「宿題 写真 AI」で検索すると、撮った瞬間に解答と解説が出るアプリがいくつも見つかります。数式でも文章題でも、手書きでも読み取ってくれる。技術としてはすでに完成していて、無料で使えるものもあります。
親のほうがどう感じているかというと、小中学生の子を持つ500人への調査(株式会社アタム・2026年3月実施)では、AIを使った勉強への不安の1位が「考える力の低下」で42.8%でした。2位以下の「情報の取捨選択の難しさ」17.4%、「学習意欲の低下」16.8%と比べても、この項目だけが突出しています。
つまり、道具はもう手元にあって、引っかかっているのは性能ではないということです。答えが出ること自体が不安の原因になっている。
私が作った仕組みでやっているのは、写真から問題文を文字にして書き出すところまでです。読み取ったテキストは、これまで使ってきた対話の画面にそのまま渡されます。そこから先は、以前から動いている「すぐには答えを言わない」やり取りが引き継ぎます。カメラは新しい入口を1つ増やしただけで、その先の作りは変えていません。

なぜ「答えを出さない」ようにしたのか?
このツールはもともと、子どものつまずきがどこにあるのかを探すために作ったものです。答えを先に出してしまうと、その子がどこで詰まったのかが見えなくなる。丸がついたか、つかなかったか、だけが残ります。それでは作った意味がなくなってしまう、と考えました。
撮影機能を足すときも、そこは動かせませんでした。カメラを付けたら答えが出る作りにするなら、既にあるアプリを使えばいい話です。カメラは答えをもらう入口ではなく、質問を始める入口として付けた、というのが今回いちばん大きな判断でした。
同じ方向に大手も動いています。Googleは2025年8月にGeminiへ「Guided Learning(ガイド付き学習)」という機能を追加しました。公式ブログには、答えを渡すのではなく深い理解を築くことを狙いとし、問いかけによって学ぶ人自身の考えを引き出す、という趣旨の説明があります。
もっとも、これで学力が伸びると言い切れる段階ではないと思っています。私も自分の子どもで試している最中で、確かめられたのは「答えが即座に出ない形でも会話は成立する」というところまでです。
写真に写るのは、問題だけではない
作り始めてすぐ気づいたのが、これでした。
学校から配られるプリントには、たいてい名前を書く欄があります。学校名や出席番号が印刷されていることもあります。宿題の問題を撮ろうとして紙全体を写すと、それらも一緒に写り込みます。
AIに画像を渡すときの注意として「顔写真や背景から場所が特定される」という話はよく見かけますが、宿題のプリントはもっと直接的です。氏名と所属が、推測ではなく文字として写っている。
私がとった対処は2つです。
- 読み取らせない: 名前・学校名・出席番号にあたる情報は書き出さないよう、AIへの指示の中で明示的に禁止しました。問題文だけを拾わせています
- 残さない: 撮った画像そのものは保存していません。履歴に残るのは読み取ったあとのテキストだけです
これは自分で作っているから中身をいじれた話であって、既製のアプリを使う場合は同じことができません。市販のアプリで撮るなら、問題の部分だけが枠に入るように寄せて撮る、名前欄を指や紙で隠す、といった撮り方の側で対応することになります。子どものスマホでやらせるなら、そこは一度一緒に確認しておいたほうがよさそうです。
AIサービスに何を渡すかという話は、子どもにAIを使わせるときの土台の部分でも書きました。撮影は文字入力より一瞬で済むぶん、渡しているものが見えにくくなります。
AIは「つぎの問題に答えましょう。」も問題だと思う
本番の環境で試していて、いちばん面白かった失敗がこれです。
読み取った結果に、問題が1つ多く出てきました。中身を見ると、1件目として拾われていたのは「つぎの問題に答えましょう。」という見出しでした。
言われてみれば当たり前です。プリントの上のほうに、他と同じくらいの大きさで、独立した一行として置かれている。人間は「これは指示文であって問題ではない」と何も考えずに切り分けていますが、その判断は文字の見た目ではなく、意味のほうから来ています。AIは見えているまとまりを素直に問題として数えました。
直し方は、条件をはっきり言葉にすることでした。「それだけ読めば解ける問いになっているものを拾う」と指示に足したところ、見出しは落ちるようになりました。
ここから読者の方に持ち帰ってもらえるとすれば、読み取った結果には目を通してから先へ進む、ということだと思います。撮影から解説までが一続きで流れるアプリだと、そもそも何を読み取ったのかが画面に出ないまま解説が始まることがあります。違う問題の解説を、正しい解説だと思って読んでしまう。これは間違いに気づく手がかりが無いぶん、答えを写すより厄介かもしれないと考えています。
AIが堂々と間違ったことを言う件については、わざとウソをつかせて子どもに見抜かせるという別の話も書いています。読み取りの取り違えは、そこで扱ったハルシネーションとは原因が違いますが、鵜呑みにすると同じところに落ちます。
1枚に何問も写っているとき、どれを聞くのか
プリントは1枚に何問も並んでいます。「この問題わからん」と持ってきた子が撮る写真にも、聞きたい問題以外が一緒に写ります。
ここでAIに「たぶんこれだろう」と選ばせると、取り違えたときに気づけません。子どもは自分が聞いた問題の答えが返ってきたと思って読みますし、親も横で見ていなければ分かりません。
なので、複数の問題が読み取れた場合はどれについて聞きたいのかを選ばせる画面を出すようにしました。1つに絞ってから会話に入ります。手間が1つ増えますが、ここは省かないほうがいいと判断しました。
読み取りにかかる時間は、手元の計測で3.6秒でした。選択の操作が挟まっても、待たされている感じにはならない範囲だと思います。
まだ確かめられていないこと
実物の手書きと複雑な図形は、まだ通していません。 検証に使ったのは、こちらで作った画像です。実際の宿題は、鉛筆の濃さもばらつきますし、消しゴムの跡も残ります。図形やグラフが入った問題をどこまで拾えるかも分かっていません。手書き文字の読み取りは、印刷された文字より誤りが増えるのが一般的とされている領域です。ここは息子に実際に使わせてみるのが次の予定です。
教育の効果も、まだ何も言えません。 答えを出さない形にしたのは私の判断であって、それで理解が深まったというデータを私は持っていません。子どもが続けられるかどうかも含めて、これから見るところです。
3.6秒という数字も、私の環境で測った1つの値です。 通信の状態や画像の複雑さで変わるはずなので、目安として受け取ってください。
まとめ
宿題を写真で撮ってAIに見せる。この操作自体は、もう特別なことではなくなりました。分かれ道は、撮ったあとに何が返ってくるかです。
我が家の場合は、返ってくるのを解答ではなく問題文にしました。そのうえで、写り込む個人情報を読み取らせない、見出しを問題と取り違えないよう条件を書く、複数写ったら選ばせる、という3つを足しています。どれも、実際に動かしてみるまで必要だと分かっていなかったものです。
既製のアプリを使う場合でも、撮る範囲を問題だけに寄せることと、読み取り結果を一度見ることの2つは、そのまま持ち込めると思います。答えが出るのが速いほど、その2つは飛ばしやすくなります。
※本記事の内容は2026年8月2日時点のものです。各AIサービスの仕様や利用条件は変更されることがあるため、最新の情報は各社の公式ページでご確認ください。
参考文献
- Google「Guided Learning in Gemini: From answers to understanding」(2025年8月6日公開・2026年8月2日確認) https://blog.google/products-and-platforms/products/education/guided-learning/
- 株式会社アタム「【AIを使った勉強・宿題はあり?|小中学生の親が抱く不安ランキング】500人アンケート調査」(2026年3月16〜17日調査・2026年8月2日確認) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000038075.html

