「日本はAIの利用が遅れている」という言い方をよく見ます。総務省の白書でも、生成AIを使ったことがある人の割合は日本が58.8%で、米国・ドイツの75.6%、中国の93.6%に届いていません。ただ、この58.8%を年代で割ると話が変わり、日本の15〜19歳は91.7%で米国の同年代(81.7%)より高いのです。
低いのは平均であって、若い層ではありません。以下、白書のデータ集にある3つの図から、どこに差があるのかを見ていきます。
全体の数字についてはAIは実際どれくらい使われている?測れた数字と、測れないので推計した数字にまとめました。この記事はその内訳です。
年代で割ると、日本の10代は世界の上位に並ぶ
利用経験を年代別に並べたものです。「使っている(過去使ったことがある)」と答えた割合です。
| 年代 | 日本 | 米国 | ドイツ | 中国 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 58.8% | 75.6% | 75.6% | 93.6% |
| 15〜19歳 | 91.7% | 81.7% | 98.1% | 96.2% |
| 20〜29歳 | 78.2% | 91.3% | 94.2% | 98.1% |
| 30〜39歳 | 56.3% | 87.5% | 88.5% | 96.2% |
| 40〜49歳 | 49.0% | 79.8% | 74.0% | 96.2% |
| 50〜59歳 | 44.2% | 62.5% | 53.8% | 88.5% |
| 60〜69歳 | 33.5% | 51.0% | 45.2% | 86.5% |
15〜19歳だけを見ると、日本は米国を10ポイント上回っています。中国とも4.5ポイント差です。
差がつくのは30代からです。日本の30代は56.3%で、米国の同年代(87.5%)とは31ポイント開きます。40代では30ポイント、50代では18ポイント、60代では17ポイントの差です。
落差がいちばん大きいのは日本
同じ表を、国ごとの「最も高い年代と最も低い年代の差」で見直すと、別のことが分かります。
| 国 | 最高 | 最低 | 差 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 91.7%(15〜19歳) | 33.5%(60〜69歳) | 58.2ポイント |
| ドイツ | 98.1%(15〜19歳) | 45.2%(60〜69歳) | 52.9ポイント |
| 米国 | 91.3%(20〜29歳) | 51.0%(60〜69歳) | 40.3ポイント |
| 中国 | 98.1%(20〜29歳) | 86.5%(60〜69歳) | 9.7ポイント |
中国は年代による差がほとんどありません。10ポイント以内に全世代が収まっています。日本はその6倍の幅があります。
「日本はAIを使っていない」という表現より、年代でいちばん割れていると言ったほうが実態に近いと考えています。同じ職場に91.7%の世代と44.2%の世代が並んでいる、という状態です。
そしてこの差はAIに対してかなり大きな世代間格差が存在していると数字が証明しています。
「使ったことがある」と「毎日使う」は別の話
ここまでは経験の有無でした。頻度を見ると、順番が入れ替わります。
日本の年代別で「ほぼ毎日使う」(1時間/日以上と1時間/日未満の合計)の割合です。
| 年代 | ほぼ毎日 | うち1時間/日以上 |
|---|---|---|
| 15〜19歳 | 32.8% | 9.5% |
| 20〜29歳 | 37.9% | 18.0% |
| 30〜39歳 | 34.5% | 12.9% |
| 40〜49歳 | 29.7% | 8.9% |
| 50〜59歳 | 18.7% | 6.6% |
| 60〜69歳 | 11.6% | 5.8% |
毎日使う割合が最も高いのは20代です。10代は32.8%で、30代(34.5%)より下になります。1時間/日以上に絞るとさらにはっきりして、20代の18.0%に対し10代は9.5%、30代の12.9%より低い数字です。
10代は触れている人がいちばん多いけれど、使い込んでいる人がいちばん多いわけではない、と読めます。広く浅い層と、狭く深い層は別々に存在しているようです。
何に使っているかは、想像と少し違う
目的別に「AIを定期的に利用している」と答えた割合です。日本の年代別で、上位のものを抜き出しました。
| 目的 | 15〜19歳 | 20〜29歳 | 30〜39歳 | 60〜69歳 |
|---|---|---|---|---|
| 情報の理解 | 55.3% | 42.2% | 35.0% | 17.0% |
| 文章作成や校正 | 40.3% | 26.7% | 19.9% | 6.8% |
| 翻訳 | 33.0% | 13.6% | 12.6% | 5.8% |
| アイデアの発想や企画の構想 | 27.7% | 22.3% | 13.6% | 3.9% |
| 日常の行動や判断にかかわる相談 | 25.7% | 21.8% | 16.5% | 4.4% |
| プログラミングやデータ処理 | 7.8% | 6.3% | 6.8% | 1.5% |
いちばん多いのは「情報の理解」です。何かを調べて、意味を掴むために使われています。次が「文章作成や校正」。
一方でプログラミングやデータ処理は、どの年代でも1桁台です。AIというとコードを書かせる用途が話題になりますが、実際の利用の中心はそこではないようです。
年代差が特に大きいのは翻訳で、10代の33.0%は20代の13.6%の2.4倍あります。学習や教育支援も10代29.1%に対し20代11.2%で、学生であることがそのまま出ていると考えています。
なお「専門家にするような相談」だけは、30代(18.9%)が20代(16.0%)を上回ります。仕事や生活で相談したいことが増える年代、ということかもしれません。
この数字をどう読むか
私はこの3つの図を、次のように受け取りました。
日本の課題は「AIを知らない」ことではなさそうです。 10代の経験率は世界の上位に並んでいます。届いていないのは30代から上の層で、しかもそこは仕事で意思決定をしている年代と重なります。
若い世代が深く使っているとも限りません。 毎日1時間以上使う割合では20代が突出し、10代は30代より下でした。学校や家庭で触れる機会はあっても、日常の道具になっているかは別、という見方ができます。
入口は「調べて理解する」ことです。 プログラミングでも自動化でもなく、情報の理解と文章作成が中心でした。まだ使っていない人に何から勧めるかを考えるなら、この2つが実績のある入口だと考えています。
子どもの側から家庭のルールを考える話は子どもとAIのルール、話しても決まらない?最初に決めるのは「使っていいか」ではないに、上の世代に使ってもらう話は高齢の親にAIを使ってもらうには?「操作を教える」より先にやるべき準備に書いています。
まとめ
- 日本の生成AI利用経験は全体58.8%だが、15〜19歳は91.7%で米国の同年代(81.7%)を上回る
- 年代による落差は58.2ポイントで、比べた4か国の中で最も大きい。中国は9.7ポイントしかない
- 経験と頻度は別。ほぼ毎日使う割合は20代(37.9%)が最高で、10代(32.8%)は30代(34.5%)より低い
- 目的の中心は「情報の理解」と「文章作成や校正」。プログラミングやデータ処理は全年代で1桁台
平均の数字ひとつで「遅れている」と片づけると、どこに手を打てばいいのかが見えなくなります。割ってみると、届いていない相手はかなりはっきりしていました。
何より使用用途で確認してみるとAIの浸透はまだまだこれからという将来性を物語っている結果となりました。現在においてもAIのヘビーユーザー達はいかにしてAIを制御するかを模索している最中なので非常に楽しみな世界です。
参考文献
- 令和8年版 情報通信白書 データ集 – 総務省(2026年8月22日確認。図表「生成AIサービスの利用経験(国別、年齢別)」「生成AIサービスの利用頻度(日本、年齢別)」「目的別のAI利用状況(日本、年齢別)」)
本記事の数値は、上記データ集に掲載された図から読み取って転記したものです。調査の対象・時期・設問の詳細は白書本編をご確認ください。

