会議が終わって数十秒後には、きれいにまとまった要約が画面に出ています。箇条書きで、決定事項があって、次にやることまで並んでいる。読みやすいので、そのまま信じたくなります。
ただ、その読みやすさこそが厄介かもしれません。要約はもとの発言より整った形で出てくるので、どこが直っていないのかが見えません。今回は、間違いが集まりやすい3か所と、どこまで直すかの線引きを書きます。
AIの要約は、そもそもどこで間違えるのか?
間違いは均等には散らばりません。出る場所に偏りがあります。
総務省の令和6年版 情報通信白書は、生成AIが「学習データに存在しない、根拠のない情報を生成する現象」をハルシネーションとして説明し、利用者には出力が正確であるかを確認することが求められる、としています。この指摘はそのとおりですが、会議の要約に限ると、実際に起きるのは事実の捏造よりも別の2種類が多いように見えます。
ひとつは、音声を文字にする段階の取り違えです。もうひとつは、要約する段階で話の強さが変わってしまうことです。会議では曖昧なまま終わった話が、要約では言い切りの形になって並びます。要約は読みやすさを優先して書かれるので、迷いや保留はそぎ落とされやすいのだと考えています。
だから私は、要約を頭から検算するのではなく、言い切っている行から当たります。強く書かれている場所ほど、元の発言では揺れていた可能性があるからです。

間違いが集まる場所1: 数字と固有名詞
金額・日付・件数・社名・人名は、真っ先に見る場所です。
ここは音声を文字にする段階で崩れます。文脈からの推測が働きにくいため、AIが補正しにくい部分でもあります。「17日」と「7日」、「3万」と「30万」のように、字面が近いほど気づきにくくなります。
この種の誤りは、確認より先に発生を減らすほうが早いです。よく出てくる社名・製品名・人名を先に登録しておくと、同じ間違いを毎回直す作業から抜けられます。Plaudの公式ページにも、発言者ラベルとカスタム用語の搭載が記載されています。具体的な手順は文字起こしの精度を上げる設定にまとめました。
間違いが集まる場所2: 決まったことと、決まっていないこと
「検討します」が「決定しました」に化ける方向の変化に注意しています。
これが先ほどの「強さが変わる」の代表例です。会議では保留になった案件が、要約の決定事項の欄に並んでいることがあります。逆に、実際には合意していたのに、要約では触れられていないこともあります。
読み返すときは、決定事項の各行に「本当にその場で決まったか」を当ててみます。ここだけは、記憶が残っているうちにやる価値があります。1週間経つと、要約に書いてあるほうが正しく思えてくるからです。
なお、これはAIの欠陥というより、要約という作業の性質だと考えています。人間が書いた議事録でも、書き手が「決まった」と受け取れば同じことが起きます。
間違いが集まる場所3: 誰が言ったか
発言者のラベルは、正しく分かれていても割り当てが入れ替わることがあります。
複数人が同時に話す場面や、声質が近い人が続けて話す場面では、話者の切り分けが難しくなります。この点はざわざわした部屋で録ってみた記事でも触れましたが、条件によって結果がかなり変わる部分です。
実務で問題になるのは、発言の中身より担当の割り当てです。「誰がやるか」がずれたまま共有されると、そのまま宿題が消えます。次にやることの欄だけは、名前を目で追う価値があると考えています。
| 見る場所 | 何を疑うか | かける手間 |
|---|---|---|
| 数字・固有名詞 | 聞き取りの取り違え | 目視。用語登録で発生自体を減らす |
| 決定事項 | 保留が決定に変わっていないか | その日のうちに記憶と照合 |
| 次にやること | 担当者の割り当て | 名前だけ確認 |
要約は全部直さないといけない?
私は、人に渡す分だけ直しています。
自分用の記録は、多少ずれていても困りません。あとで元の音声に戻れるからです。困るのは、誤ったまま他人の手元に渡ったときです。渡った先では、その要約が唯一の情報になります。
解説記事の多くは「AIの出力をそのまま使うのは危険なので、全体を確認するべきだ」という立場を取っています。方向としては正しいのですが、毎回の会議で全文を検算する運用は続かないと考えています。続かない手順は、結局どこかで飛ばされます。それなら直す対象を減らして、確実に回るほうを選ぶという判断です。
正直に書いておくと、この線引きは楽をするための割り切りです。重要な意思決定が絡む会議や、社外に出す文書のもとになる記録では、この判断は使えません。そこは全体を読む場面だと考えています。
直すのは要約か、それとも渡し方か?
要約に手を入れるより、戻れる形で渡すほうが早いことがあります。
要約を配るときに、元の記録にたどり着ける状態にしておくと、受け取った側が自分で確かめられます。文字起こしの管理の記事に書いたとおり、録音と文字起こしは証拠、外に出した数行が日常的に使う情報です。証拠が残っているなら、要約を完璧に磨き上げる必要はありません。
そのうえで、渡すときに一言添えます。「AIの要約なので、数字と担当だけ確認してください」。この一文があるだけで、受け取る側の読み方が変わります。会議で録音そのものを切り出しにくい場合の伝え方は、議事録を録りたいと言い出しにくいときの記事にまとめました。
なお、要約の出方そのものを自分の用途に寄せておくと、直す量は減ります。Plaudの公式ページには10,000種類以上の要約テンプレートの搭載が記載されていて、自分で作ることもできます(テンプレートを育てた話)。ちなみに文字起こしの精度について、公式は具体的な数値を出していません。ここは道具側の性能を数字で比べにくい部分だと考えています。
まとめ
読み返すときに見るのは3か所です。
- 数字と固有名詞。聞き取りの取り違えが集まる場所
- 決定事項。保留が決定に変わっていないか
- 次にやることの担当者。名前がずれていないか
そして、直すのは人に渡す分だけ。渡すときは元の記録に戻れる形にして、「数字と担当だけ確認してください」と添えます。
AIの出力を疑う練習という意味では、家庭側で書いたわざとウソをつかせてみた記事と地続きです。仕事でも家でも、見抜く側の目を持っているほうが道具を使い倒せると考えています。

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参考文献
- 総務省 令和6年版 情報通信白書「生成AIが抱える課題」(2026年8月5日確認)
- Plaud公式 Note Pro 商品ページ(2026年8月5日確認)
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