AIに「議事録づくりを任せたら、月に何時間浮く?」と聞くと、表と合計がきれいに返ってきます。ところが、どの数字をどこまで信じてよいかは表の見た目からは分かりません。結局ひとつずつ検索し直すことになり、AIに聞いた手間が半分戻ってきてしまう。
ですが、答えの中の数字を3種類に分けてもらえば、調べ直す場所はぐっと絞れます。
推計を実際にやってみせた話はAIの利用率の記事に、要約の中の数字の直し方は要約の記事に書きました。今回はその間にある、AIに数字を出させたときの確かめ方です。
AIの答えの数字は「出典・計算・仮定」の3種類
AIが返してくる数字は、出どころで3つに分かれます。
| 種類 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 出典のある数字 | 統計や調査、公式の資料から持ってきた数字 | 「国内の利用率は○%」 |
| 計算した数字 | ほかの数字を掛けたり足したりして出した数字 | 「合計で月○時間」 |
| 仮定の数字 | 根拠がないまま、仮に決めた数字 | 「1回あたり30分かかるとすると」 |
表の中では、この3つが同じ書式で並びます。太字の合計も、仮に決めた「30分」も、見た目の確かさは同じ。そこが迷うところです。
たとえば冒頭の質問なら、「1回の議事録に30分」「月に20回」は仮定の数字で、「月10時間」は計算した数字です。業界の調査を持ち出してきたなら、それが出典のある数字になります(ここでの数字は説明のための仮の例です)。
分けてもらうだけで、見る場所がはっきりする!
分ける作業は、AIに頼めます。答えが返ってきたら、続けてこう送るだけです。
今の答えに出てきた数字を1つずつ、「出典」「計算」「仮定」のどれかに分けて表にしてください。出典は資料の名前と年、計算は式、仮定はその値にした理由を書いてください。
返ってきた表を見れば、どの数字をどう確かめればいいかが一目で分かります。出典の欄が空いている数字、仮定の理由が「一般的に」としか書かれていない数字。確かめる場所は、そのあたりに集まっていることが多いと感じます。
私も普段から、AIには推測と事実を分けて書かせるように設定しています(AIが「わからない」と言わない理由の記事)。数字の場合は、それをもう一段細かくして、事実の側を「出典」と「計算」に分けるイメージです。
最初に見るのは「仮定の数字」。動かして答えが変わるかを見る
確かめる順番は、仮定の数字からがおすすめです。結論をいちばん大きく左右しているのが、この数字であることが多いからです。
見方は簡単で、AIにもう一度頼みます。「仮定の数字を半分にした場合と、2倍にした場合で、結論がどう変わるかを見せてください」。答えがほとんど変わらないなら、その仮定は多少ずれていても困りません。答えが大きく動くなら、そこが自分で決めるべき数字です。
AIの利用率の記事で推計をやってみたときは、課金している人の割合という仮定を2倍にすると、答えもそのまま2倍になりました。表の形はもっともらしくても、結論はその仮定の言い換えだったということです。
仮定の数字は、調べても出てこないことが多い数字です。だからこそ、自分の手元の数字に置き換えるのがいちばん確かだと考えています。先ほどの例なら「1回30分」を、先月の自分の記録に差し替える。それだけで、答えは自分の話になります。
出典のある数字は、資料を開いて同じ数字があるかを見る
出典のある数字で確かめるのは、次の4つです。
- その資料が実在するか
- 同じ数字が書いてあるか
- 年(いつの時点の数字か)が合っているか
- 対象(日本か世界か、全体か一部の年代か)が合っているか
AIは、実在しない資料を挙げてしまうことがあります。資料は本物でも、別の年の数字や、別の対象の数字が混ざることもある。検索の機能を使える場合は、出典のリンクを出させて、そのページを自分で開くのがいちばん早い方法です。
もっともらしい答えほど疑いにくいものです。AIにわざとウソをつかせてみた記事でも書いたとおり、出力の見た目と中身の確からしさは別物。こちらの思い込みにAIが話を合わせてくる癖もあるので(AIが話を合わせてくる理由)、「この数字で合っていますよね?」と聞き返すのは確かめたことになりません。
計算した数字は、式を出させて電卓で1回
計算した数字は、式さえ出ていれば自分で確かめられます。見るところは3つです。
- 単位がそろっているか(万と億、月と年、時間と分)
- 割合を掛ける相手が合っているか(全体に掛けるのか、一部に掛けるのか)
- 途中で四捨五入した数字を、そのまま次の計算に使っていないか
式を電卓で1回たどるだけの作業です。計算用の機能(データを分析する機能など)を使えるサービスなら、最初からそちらで計算させておくと、確かめる手間をさらに減らせます。
AIの会社自身も「確認して」と書いている
ここまでの手順は、AIを作っている会社の説明とも重なります。OpenAI のヘルプセンターは、ハルシネーション(事実と違う出力)の例として、次のものを挙げています。
捏造された引用、研究、出典、または存在しない情報源への参照(OpenAI ヘルプセンター「ChatGPT は真実を伝えますか?」)
同じページには「自信は信頼性ではありません」とも書かれています。ツールの説明では、計算やデータ分析の機能について「正確な計算」とあり、出典のある数字と計算した数字では確かめ方が違うことが読み取れます。
Anthropic のドキュメントも、出典を示させて確かめる方法を挙げています。
それぞれの主張について引用と出典を示させることで、Claudeの応答を監査可能にします。また、応答を生成した後に、各主張を裏付ける引用を見つけさせることでClaudeに検証させることもできます。引用が見つからない場合は、その主張を撤回しなければなりません。(Anthropic「ハルシネーションを減らす」)
推論を順を追って説明させると「誤った論理や前提が明らかになることがあります」とも書かれています。数字を3種類に分けて式と仮定を出させるのは、この考え方を数字に当てはめたものだと考えています。
まとめ
- AIの答えの数字は「出典・計算・仮定」の3種類に分かれ、表の中では同じ顔で並ぶ
- 分けるのはAIに頼めば済む。出典・式・仮定の理由を1つずつ書かせる
- 最初に見るのは仮定の数字。半分と2倍で結論が変わるなら、そこは自分の数字に差し替える
- 出典のある数字は、資料を開いて「実在・同じ数字・年・対象」の4つを見る
- 計算した数字は、式を出させて電卓で1回たどる
以前はAIのハルシネーション(嘘・予想)を出させないようにするためにプロンプト等で様々な工夫がされてきました。最近はモデルの進化によって大分減ってはきた印象ではありますがまだまだ完全に消えたわけではありません。むしろ不明瞭な部分についてはより巧妙にもっともらしく表示してきます。
ただ、AIだってわざと誤魔化しているわけではないんです。結果が間違っていたとしてもユーザーを満足させるために回答していると考えると、こちらから分けて回答させる指示をすることで、AIも回答しやすくなるはずです。
全部を調べ直さなくても、確かめる場所さえ分かれば、AIの数字は十分に使える材料になると考えています。次にAIに数字を聞いたときは、答えの最後に「この数字を出典・計算・仮定に分けて」と1行足してみてください。
参考文献
- OpenAI ヘルプセンター「ChatGPT は真実を伝えますか?」 https://help.openai.com/ja-jp/articles/8313428-does-chatgpt-tell-the-truth (2026年9月28日確認)
- Anthropic「ハルシネーションを減らす」(Claude Platform Docs) https://platform.claude.com/docs/ja/test-and-evaluate/strengthen-guardrails/reduce-hallucinations (2026年9月28日確認)

