内見から事務所に戻るころには、お客様が言っていたことは要点だけになっています。「収納が思ったより小さい」「駅からの道は明るいほうがいい」。メモに残るのは条件の項目で、どの言い方で気にしていたかは消えていきます。
その場の音が残っていれば、次の物件を選ぶときに本人の言葉のまま確かめられます。
職業別シリーズの13回目は、賃貸と売買の仲介で動く不動産営業です。録音や文字起こしの使い方そのものは第12話の研究者までに書いてきたので、ここでは不動産に固有のところを取り上げてみます。注文住宅の打ち合わせについては第1話のハウスメーカーにまとめました。
内見のメモは、歩きながらでは取りきれない
内見中の営業担当は、案内しながら鍵と時間を管理し、設備の説明をし、お客様の反応を見ています。その合間に出てくる一言をメモに落とすのは難しい。
しかも条件の話は、物件を見ている最中にいちばん動きます。事前に聞いていた希望が、実物を見た瞬間に「ここは我慢できる」「これは無理」に分かれていく。その分かれ目こそ次の提案の材料なのに、書き留める余裕がない場面で出てきます。
次の提案が、お客様の言葉から組める!
声が残っていれば、事務所に戻ってから内見中の会話を追いかけられます。条件の優先順位は、たいてい言い回しのところに出ます。
「駅から10分以内」と聞いていた希望が、実際には「夜に歩く道が明るいかどうか」の話だった、という形で具体が付くことがある。条件の項目ではなく、その理由のほうが次の物件選びに残ります。
PLAUDでは、要約を作るとマインドマップも一緒にでき、ノートの末尾に表示されます。要約をもとに、大きな話題とその下の細かい話題、要点が枝分かれで並ぶ。「駅までの道」の枝の下に「夜が明るいか」がぶら下がるような形で並べば、お客様の希望どうしのつながりを一枚で見渡せます。
私自身、考えごとを声に出して録り、マインドマップで見返す使い方をしています。文章の要約より全体を俯瞰しやすいと感じていて、その使い方は会議以外でPLAUDを使う記事に書きました。内見の会話は行ったり来たりしながら希望が出てくるので、枝で見たほうが優先順位の並びをつかみやすいはずです。マップは要約から作られるため直接は書き換えられず、抜けている希望があれば要約を作り直すことになります。
物件名や地名、設備の型番は、文字起こしで別の字になりやすいところです。よく出てくる語を先に登録しておくと、直す手間を減らせます。やり方は文字起こしで名前が毎回違う字になるときへ。空室は音が反響しやすいので、録るときの距離の取り方はざわざわした部屋でAIボイスレコーダーは使えるかを参考にしてください。
先輩が物件を見た瞬間に言うひとことが、後から生きる
経験のある担当者は、建物に入って数分で気になるところを口に出します。共用部の使われ方、水回りの直し方、管理の入り具合。その場では理由まで説明されないことも多いはずです。
同行したときの音が残っていれば、あとから「なぜあの場所を見たのか」を自分で組み立て直せます。見るべき場所のリストを渡されるより、見た順番と言葉がそのまま残っているほうが手がかりになると考えています。
これは物件の評価を録音に任せる話ではありません。判断するのは担当者で、録音が残すのは判断のきっかけになった言葉のほうです。
記録は、お客様にも渡せるもの
録音というと自分の側に残す備えのように聞こえますが、不動産の場合はそうとも限りません。
国土交通省のIT重説のマニュアルには、宅建業者が録画・録音で記録を残す場合、説明の相手方の求めに応じてその複製を提供する、という考え方が書かれています。記録は業者だけのものではなく、相手も受け取れるものとして置かれている。
対面の商談でも、同じ構えは取れます。「後で確認できるように録らせてください」と伝えて録り、聞かれたら渡せる状態にしておく。同じ記録を双方が持てるなら、認識のずれはその場で解けます。渡す範囲の決め方は議事録を全文そのまま送っていいかに書きました。
録るときに伝えて、消す時期まで決めておく
ここが不動産に固有のところです。
まず、録るなら相手に伝えます。伝え方は取引先との会議、AIで録音していい?にまとめました。IT重説のFAQも、録画・録音には抵抗を感じる人がいるとしたうえで、明示的な同意を得ることが望ましいとしています。
次に、話の途中で止められるようにしておきます。マニュアルは、機微な情報に触れる場面では録画・録音を中断し、その旨を相手にも伝えて、必要に応じて再開するという対応を挙げています。売主や貸主の事情に触れる場面は、仲介では珍しくないはず。
そして消す時期です。IT重説の記録について、保存期間の定めは宅建業法にはありません。つまりいつまで持つかを自分たちで決めて、相手の同意を得ておくことになります。FAQは、契約に至らなかった場合は速やかに消す取り決めをしておくのが望ましいという例まで挙げています。
自分の判断で消せる録音との違いは録音データはいつ消せばいいかに書いたとおりです。お客様の情報が入る録音は、会社のルールの側で扱いが決まります。
制度がすでに、録音の扱い方を書いている
ここからは制度の話です。飛ばしても、本文の理解には困りません。
不動産取引では、非対面での重要事項説明(IT重説)が本格運用されていて、国土交通省がその実施マニュアルを出しています。録音を正面から扱った文書は多くありませんが、このマニュアルには記録の残し方が具体的に書かれています。
IT重説の実施状況について、録画・録音により記録を残すことは、トラブルが発生したときの解決手段として有効と考えられます。
そのうえで、実施するときの対応が3つ挙げられています。
・IT重説の実施中の状況について、録画・録音をする場合には、利用目的を可能な限り明らかにして、宅建業者と説明の相手方の双方了解のもとで行う。
・重要事項説明の実施途中で、録画・録音をすることが不適切であると判断される情報が含まれる場合…については、適宜、録画・録音を中断する旨を説明の相手方にも伝え、必要に応じて録画・録音の再開を行う。
・宅建業者が録画・録音により記録を残す場合、説明の相手方の求めに応じて、その複製を提供する。
保存期間については、別冊のFAQ(令和6年12月版)に次のようにあります。
IT重説の実施状況の録画・録音記録の保存・管理期間について、宅建業法上の規定はございません。
同じ回答は、契約に至らなかった場合について「特段の必要性がない限り、速やかに削除・廃棄を行う旨取り決めておく等が望ましい」としています。録るところだけでなく、やめる時期まで含めて決めておくという形です。
これらはIT重説について書かれたもので、対面の商談や内見の録音を定めたものではありません。ただ、同意を取り、中断でき、求められたら複製を渡し、期間を決めて消す、という組み立ては、そのまま日々の記録の作法として読めると考えています。実際にIT重説を行うときは、マニュアルの本体とFAQにしたがってください。
まとめ
内見で録音がいちばん働くのは、条件が動いた瞬間です。項目ではなく言い回しが残り、要約についてくるマインドマップで希望のつながりも見渡せるので、次の提案を本人の言葉から組める。同行した先輩のひとことも、理由を自分で組み立て直す材料になります。
一方で、お客様の情報が入る録音は、会社の側で扱いを決めるものです。録ると伝える、機微な場面では止める、求められたら渡す、期間を決めて消す。制度の文書がすでにこの順番で書いているので、迷ったらそこに戻れます。
記録の作法が決まっていれば、案内そのものにもっと時間を使えるはずです。

Plaud Note Pro
PLAUDより当サイト読者向けに5%OFFクーポンをいただきました
MRNXWCPG2ZVN
下の「Plaud公式ストアで見る」ボタンから進むと自動で適用されます(手動の場合は決済前の画面でこのコードを入力)。公式ストアの全製品が対象です。他のクーポンとの併用はできませんが、セール時は併用できます
価格・在庫・キャンペーンは各ストアの販売ページでご確認ください
参考文献
- 国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」(令和4年4月) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001479770.pdf (2026年9月18日確認)
- 同 別冊「4.参考資料(FAQ)」(令和6年12月版) https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001853618.pdf (2026年9月18日確認)
- Plaud サポート「マインドマップ」 https://support.plaud.ai/hc/ja/articles/57430809095833 (2026年9月18日確認)
本記事は公開されている行政の文書にもとづく一般的な整理です。IT重説の実施方法、録音の扱い、保存期間の設定については、所属する会社の規程と国土交通省のマニュアルにしたがってください。

