職員会議で記録係に当たった日は、話の中身よりも打ち込む手のほうに気が向きます。読み返せる議事録にするには、その場で要点を選んで文字にしないといけないので、選び終わったころには次の議題が始まっています。
ですが、その場の音が残っていれば、要点を選ぶ作業は会議のあとに回せます。
この記事は職業別シリーズの7回目です。録音や文字起こしの使い方そのものは第6話までに書いたので、今回は学校に固有の事情を取り上げてみます。
職員会議の議事録は、会議が終わってから作れます
議事録づくりで時間がかかるのは、打ち込むところではなく何を残すかを決めるところです。会議中はこの2つを同時にやることになります。発言を追いながら、いま聞いた一言を議事録に入れるかどうかを判断する。判断しながら聞いているので、議論そのものには半分しか入れられません。
音が残っていると、この2つを切り離す事が可能になります。会議のあいだは聞くほうに使って、要点を選ぶのは終わってから文字起こしを見ながらやる。順番を入れ替えただけなんですが、会議中に自分ができることが変わります。
同じ形が使えるのが研究授業の事後協議会です。協議会は参加した人がそれぞれ気づいたことを短く言っていく場になりやすく、あとから思い出せるのは自分が言ったことだけ、ということが起きます。音が残っていれば、他の人の指摘をそのままの言い方で読み返せます。要約されていない状態の指摘は、次の授業を組み直すときの手がかりとして扱いやすいです。
あとから探せる形にしておく手順は文字起こしが溜まって探せないときの3つの習慣、出てきた要約のどこを直すかはAIの要約はどこを直せばいいかにまとめています。
先輩の学級経営は、理由のところだけが言葉になっていません
学校には、経験でまわっている部分があります。学級が落ち着いている先生がいて、その先生に聞くと特別なことはしていないと言う。これは記録が足りないのではなく、やっている本人には説明する必要がないので言葉になっていない、という状態ではないかと考えています。
若手が見えているのは結論のほうです。この時期はこの並びにする、この子には先に声をかける。なぜそうするのかは、たいてい省略されます。ただ理由が出てくる瞬間はあって、それは雑談や、うまくいかなかった直後の振り返りのような、記録を取っていない場面に多いように感じます。
ここで残す記録は、管理のための記録ではありません。教わる側が自分のために残す記録です。あとで読み返したときに、自分がまだ言葉にできていなかった判断が先輩の言い方で書いてあるほうが、次に自分が同じ場面に立ったときに使えます。
経験だけで進む進め方が古いという話でもないです。長く続けてきた人の言葉には、資料に落ちていない判断が入っています。この論点は第4話・現場監督で先に書いたもので、シリーズの縦の串になっています。
学校の情報は、持ち出しの線が先に引かれています
ここまでは、録れば残るという話でした。学校の場合は、その手前に決まっていることがあります。
文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和7年3月改訂)は、情報資産を重要性で分類し、外部に持ち出すときの手続きを分けています。原文はこうです。
教職員等は、重要性分類Ⅱ以上の情報資産を外部持ち出しする場合は、限定されたアクセスの措置設定(アクセス制限や暗号化)を行い、教育情報セキュリティ管理者の個別許可を得なければならない。また、持ち出し持ち帰りの記録をつけなければならない。
分類の中身も定義されています。分類Ⅰは「要配慮個人情報はすべからく重要性分類Iに該当する」とされ、分類Ⅱは「機密性の高いもの(健康、指導、成績、進路に関わる情報等)」を指します。
児童生徒の健康や指導、成績、進路の話が入っている音声は、この分類にかかってくる可能性があります。職員会議でも、議題によっては同じです。
ただし、このガイドライン自体が学校を直接縛るものではありません。冒頭に位置づけが書かれています。
本ガイドラインは、主に教育委員会が教育情報セキュリティポリシーの策定や見直しを行う際の参考として、教育情報セキュリティポリシーの基本理念と検討する際の考え方について解説したものである。
実際に適用されるのは、自分の自治体の教育委員会が作ったポリシーです。想定されているのも主に地方公共団体が設置する学校です。同じガイドラインを保護者の側から読んだ記事が子どもの学校のAI、親は何を聞いていいかです。
自分の自治体のポリシーで見るべきなのは、3か所
全文を読む必要はないと考えています。録音を持ち込むかどうかの判断に関わるのは、ガイドラインの並びでいうと3か所です。
1つめは、外部持ち出しの許可と記録。 上に引いた項目です。許可を出すのが誰で、持ち出しの記録をどこにつけるのかは、自治体のポリシーには具体的に書かれています。
2つめは、外部サービスの利用。 原文はこう。
利用する電子メール、外部ストレージサービスは教育委員会又は学校から提供される公式サービスのみを利用し、私的に契約したサービスを利用してはならない。
AIボイスレコーダーは、録った音をクラウド側へ送って文字起こしと要約を作る作りのものが多いです。この仕組みが「私的に契約したサービス」に当たるかどうかは、ガイドラインの文面だけでは決まりません。自治体のポリシーがどこまでを外部サービスとして書いているかで変わるので、ここは推測せずポリシーの本文で確かめるところです。どのデータがどこへ渡るのかはメーカーの公開情報として整理できるので、確認の材料はデータの扱いをまとめた記事に置いています。
3つめは、外部電磁的記録媒体。 原文はこうです。
管理された外部電磁的記録媒体以外の使用禁止
教育委員会又は学校から支給された公的な媒体のみを利用すること。
USBメモリを想定した項目ですが、録音データが入った機器そのものをどう扱うかは自治体によって書き方が違うところです。
3か所を見ておくと、「録っていいのか」という大きな問いではなく、「この場面は録る、この場面は録らない」という形で自分で決められます。
守秘義務の範囲は、法律の一行が決めています
公立学校の教員は地方公務員です。守秘義務は地方公務員法第34条第1項にあります。
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
このシリーズでは同じ形を何度か見ています。第3話・士業では税理士法と社会保険労務士法に、義務がその職を離れた後も続くと書かれていました。学校も同じ構造です。録音や文字起こしが手元の端末に残っていると、辞めたあとも自分が持っている状態になります。
いつ消すかを決めておく話は録音データはいつ消せばいいかに書いています。持ち出しの記録をつける決まりがあるなら、消す時期もそこに合わせるのが素直です。
なお、私立学校の教員はこの条文の対象ではありません。根拠になるのは就業規則や雇用契約の守秘条項です。
断る相手を決めておけば、録る場面は選べます
断る相手は場面ごとに変わります。職員会議なら進行役か管理職、研究授業の協議会なら参加者、保護者面談なら保護者です。授業そのものを録るなら児童生徒と保護者の話になるので、ここがいちばん重くなります。分類Ⅰに近づく場面でもあります。
録らない場面を先に決めておくと、残りで迷わなくなります。児童生徒が特定できる話が中心になる場面は持ち込まない、会議と研修と協議会は録る、というような線の引き方です。
言い出し方そのものはAIで議事録を録りたいと言い出しにくいとき、相手が身内でない場合は取引先との会議で録音していいかに書いています。
まとめ
職員会議も研究授業の協議会も、音が残っていれば要点を選ぶ作業を後ろに回せます。先輩の判断の理由のように、その場でしか言われないものも残ります。
学校の場合は、その手前に持ち出しの線があります。見るのは自分の自治体のポリシーの3か所で、全文ではありません。録っていいかを毎回考えるより、録らない場面を決めてしまうほうが早いです。会議と研修だけでも、放課後に残る作業はひとつ減ります!
ICTの整備は進んだ一方で、記録の作り方は人の手に残っている部分が多いように見えます。全部を変えなくても、会議と研修から始められる範囲はあると考えています。
何より教職の場においても働き方改革によって効率を求められているのであれば、自治体側も現場の職員達がより働きやすい環境を構築しやすいように、このようなツールの利用に一定の理解が求められるものと考えます。

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参考文献
- 文部科学省「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和7年3月改訂) https://www.mext.go.jp/content/20250325-mxt_jogai01-100003157_1.pdf (2026年9月12日確認)
- 文部科学省「『教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』公表について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1397369.htm (2026年9月12日確認)
- 地方公務員法 第34条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261 (2026年9月12日確認)
本記事は法令とガイドラインの公開情報にもとづく一般的な整理です。録音の可否、記録の持ち出し、保護者や児童生徒への説明については、所属する学校および自治体の教育委員会の取り決めをご確認ください。

